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総合失調症

統合失調症は、およそ100人に1人がかかる頻度の高い病気で、幻覚や妄想という症状が特徴的な精神病です。しかしそれだけではなく、人々と交流しながら家庭生活や社会生活を営むという機能が障害を受け、「自分の状態がおかしいかもしれない」と反省的に考えることが難しくなる(病識の障害)、という特徴を併せ持っています。
多くの精神疾患と同じように慢性の経過をたどりやすく、その間に幻覚や妄想が強くなる急性期が出現します。
新しい薬の開発と心理社会的ケアの進歩により、初期患者のほぼ半数は、完全かつ長期的な回復を期待できるようになりました。従来は「精神分裂病」が正式な病名でしたが、「統合失調症」へと名称変更されました。

病名(名称)について

統合失調症は、これまで精神分裂病と呼ばれてきました。英語やドイツ語の本来の意味は、「こころの連想機能が分裂している」という意味でした。しかし、日本語の精神分裂病という病名は「人格が分裂する病気」という誤解を生みやすく、悪いイメージや偏見が固定してしまっていることから、言語を翻訳しなおして「統合失調症」へと名称変更されることになりました。この名称は、「精神機能の統合が乱れている状態」という意味を表したもので、回復が可能であるというニュアンスがこめられています。
症状

陽性症状(幻覚・妄想)
・幻覚
 幻覚とは、実際にはないものが感覚として感じられることです。統合失調症で最も多いのは、聴覚についての幻覚、つまり幻聴で、誰も居ないのに人の声が聞こえてくる、他の音に混じって声が聞こえてくる、という幻聴です。「お前は馬鹿だ」などと本人を批判・批評する内容、「あっちへ行け」と命令する内容、「今トイレに入りました」と本人を監視しているような内容が代表的です。
 普通の声のように耳に聞こえて、実際の声と区別できない場合、直接頭の中に聞こえる感じで、声そのものよりも不思議と内容ばかりがピンとわかる場合などがあります。幻聴に聞き入ってニヤニヤ笑ったり(空笑)、幻聴との対話でブツブツ言う(独語)こともあります。

・妄想
 妄想とは、明らかに誤った内容を信じてしまって、まわりが訂正しようとしても受け入れない考えのことです。
 迫害妄想(街ですれ違う人に紛れている敵が自分を襲おうとしている)
 関係妄想(近所の人の咳払いは自分への警告だ)
 注察妄想(道路を歩くと皆がチラチラと自分を見る)
 追跡妄想(警察が自分を尾行している)
 誇大妄想(自分には世界を動かす力がある)
妄想に近い症状として、自分の考えや行動に関するものがあります。
 考想化声(考えていることが声となって聞こえてくる)
 作為体験(自分の意思に反して誰かに考えや身体を操られてしまう)
 考想伝播(自分の考えが世界中に知れ渡っている)
陰性症状(日常生活や社会生活における障害)
 幻覚や妄想に比べて病気による症状とはわかりにくい症状です。患者本人も説明しにくい症状ですので、周囲からは「社会性がない」「常識がない」「気配りがない」「怠けている」などと誤解される元となります。

・会話や行動の障害
 会話や行動のまとまりが障害される症状です。日常生活では、話のピントがずれる、話題が飛ぶ、相手の話のポイントがつかめない、行動の能率が悪い、作業のミスが多い、などの形で認められます。症状が極端に強い場合には、会話や行動が滅裂になることもあります。
・感情の障害
 自分の感情についてと他人の感情の理解についての、両者に障害が生じます。
 自分の感情についての障害というのは、感情の動きが少ない、物事に対して適切な感情がわきにくい、感情を適切に表せずに表情が乏しく硬い、それなのに不安や緊張が強く慣れにくい、などの症状です。
 また、他人の感情についての理解が苦手になり、相手の気持ちに気づかなかったり、誤解することが増えます。こうした感情の障害のために、対人関係において自分を理解してもらったり、相手と気持ちの交流をもつことが苦手となります。

・意欲の障害
物事を行うために必要な意欲が障害されます。仕事や勉強をやろうとする意欲が出ずにゴロゴロばかりしてしまう、部屋が乱雑でも整理整頓しようとしない、入浴や洗面などの身辺の清潔にも構わない、という症状として認められます。
さらにより基本的な意欲として、他人と交流をもとうとする意欲、会話をしようとする意欲が乏しくなり、無口で閉じこもった生活となる場合もあります。
病識の障害

 「病識」というのは、自分自身が病気であること、あるいは幻覚や妄想のような症状が病気による症状であることに自分で気づくことができること、認識できることを言います。
 統合失調症の場合には、この病識が障害されます。多くの場合、ふだんの調子とは異なること、神経が過敏になっていることは自覚できます。しかし幻覚や妄想が活発な時期には、それが病気の症状であると言われても、なかなかそうは思えません。症状が強い場合には、自分が病気であると認識できない場合もあります。治療が進んで病状が改善すると、自分の症状について認識できる部分が増えていきます。
病型

 統合失調症の症状には様々なものがありますが、一人の患者さんに全ての症状が現れるわけではありません。そこで、症状や経過の特徴に基づいて、妄想型・破瓜型・緊張型の三つのタイプに分類します。病型ごとに経過も異なり、妄想型と破瓜型は慢性の経過を、緊張型は周期性の経過をたどることが多いです。

・妄想型
幻覚や妄想が主体の病型です。
・破瓜型
解体型とも呼ばれ、感情や意欲の障害が主題の病型です。
・緊張型
緊張病症状と呼ばれる興奮と昏迷(意識はあるが無動・無言となること)が主体の病型です。
経過

・前兆期
 急性期を前にして様々な症状が出現する時期です。精神症状としては、焦りと不安感・感覚過敏・集中困難・気力の減退などがあります。それだけでなく、不眠・食欲不振・頭痛など自律神経を中心とする身体の症状が出やすいことも特徴です。

・急性期
 幻覚や妄想などの、統合失調症に特徴的な症状が出現する時期です。この幻覚や妄想は、患者本人にとっては不安・恐怖・切迫感などを強く引き起こすものです。
 そのため、行動にまで影響が及ぶことが多く、行動がまとまらなくなったり、周囲とのコミュニケーションがうまくとれなくなったり、睡眠や食事のリズムが崩れて昼夜逆転の生活になったりなど、日常生活や対人関係に障害が出てきます。

・回復期
 治療により急性期が徐々におさまっていく過程で、現実感を取り戻す時期でもあります。疲労感や意欲減退を覚えつつも将来への不安と焦りを感じます。
 周囲からは、結構よくなったように見えますが、本人としてはまだ元気が出ない時期ですので、辛抱強く待つ姿勢がよい結果を生みます。

・安定期
 回復期を経て、安定を取り戻す時期です。すっかり病前の状態へと戻れる場合もありますが、急性期の症状の一部が残存して取り除けない場合、回復期の元気のないような症状が続いてしまう場合などもあります。
家族や周囲の人の対処法

・病気とそのつらさを理解する
 患者さんがとんなことを苦しく感じるのか、日常生活で怠けやだらしなさと見えるものが実は病気の症状であること、を理解してもらえることは、患者さんにとっては心強いことです。「気持ちがたるんでいるから病気になるんだ」と言われて理解してもらえないことは、患者さんにとってはつらいことです。

・医療のパートナーになる
 診療に同伴して家庭での様子を主治医に伝える、薬の飲み忘れがないように気を配る、などのことです。医師から処方された薬について、「薬を続けるとクセになってよくない」などと言うと、患者さんをとても迷わせてしまいます。

・接し方を少し工夫する
 患者さんは、対人関係に敏感になっており、そこからのストレスが再発の引き金の一つとなる場合があります。特に患者さんが苦手なのは、身近な人から「批判的な言い方をされる、非難がましく言われる」「オロオロと心配されすぎる」ことです。患者さんのよい面を見つけて評価する、困ったことについては具体的な解決策を一緒に考える、という接し方が理想的です。

・自分自身を大切にする
 「親の育て方が悪かったからこんな病気になった」と自身を責めるご両親がいます。しかしこれは、医学的な事実ではありません。育て方のせいで、統合失調症を発症することはありません。また、「自分の生活のすべて犠牲にしても、治療にささげなければならない」と献身的に頑張る方もいます。しかし、こうした努力を長続きさせることは難しいことです。また患者さん自身にしても、周囲の方が自分を犠牲にするほどの献身をすると、かえって心理的な負担を感じてしまいます。ご自身の人生と生活を大切にしたうえで、治療への協力をお願いします。
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